よふけ

「別れなよ」しか返ってこない — 浮気の相談303件を読んで数えた

2026年8月3日 よふけ

浮気やその疑いで苦しんでいる人が、実際に何に困っているのか。

Yahoo!知恵袋に公開されている浮気関連の質問303件を読んで、書かれている悩みを分類して数えました。この記事はその結果です。

最初に立場を書いておきます。私は「よふけ」という、浮気の悩みを聞くLINEのサービスを作っている側の人間です。中立な第三者の調査ではありません。ただ、これから書く数字は、サービスを作るために自分で数えた実際の集計で、都合よく作った数字ではないです。都合が悪くて外れた仮説も、最後に書きます。

何を数えたか

Yahoo!知恵袋の公開質問から浮気・不倫に関するものを集め、303件を読んで、その人が「何に困っていると書いているか」で分類しました。1つの質問に複数の悩みが書かれていることは普通にあるので、合計は100%を超えます。

結果はこうなりました。

書かれていた悩み 件数 割合
決められない(別れるか許すか) 88件 29.0%
見てしまう(スマホの確認がやめられない) 66件 21.8%
眠れない・体調が壊れている 57件 18.8%
費用が高すぎて頼めない 35件 11.6%
誰にも言えない 22件 7.3%

いちばん多かったのは「決められない」

3割近くを占めたのがこれでした。ただ、数が多いことより、その中身のほうが意外でした。

相談相手がいないから決められない、という話ではないんです。

「私の周囲には話を聞いてくれる人がたくさんいます。皆一様に別れろと言います。けど正直やり直せるなら…と願う心があります。」

「誰に相談してもどれだけ考えても決められません。。覚悟ができません。」

聞いてくれる人は、いる。それでも決まらない。

読んでいて気づいたのは、周囲から返ってくる答えがほぼ一種類しかないことでした。別れなよ。そんな人やめときな。あなたは悪くない。どれも善意で、どれも間違っていません。でも、まだ気持ちが残っている人にとっては、その正しさが逃げ場をなくす方向に働いてしまう。

「別れる」と「許す」のあいだで揺れている状態そのものを、否定されずに置いておける場所が、どこにもない。

この構図をいちばん的確に言葉にしていたのは、実は相談者ではなく、ある質問に付いたベストアンサーでした。

「相談っていうのは何を相談するんでしょうか?人様の旦那が不倫してる相談なんてされても、、、家もそうだよーとは言えませんし、あなたに魅力がないからじゃない?とも言えませんし、離婚しちゃえば?とか無責任なことも言えません。ただ話を聞いてほしいだけなら、サイトとかアプリで知らない人に愚癡るか…」

冷たい回答に見えるかもしれませんが、書かれていることは正確だと思います。聞かされた側も困る。共感すれば無責任になり、正論を言えば追い詰める。だから「別れなよ」に着地する。

2番目は「見てしまう」

スマホを見るのがやめられない、という悩みが2割強ありました。

「夫のスマホを見るのがやめられません。こんなこと知らない方が幸せなことは分かっているのですが、いつ浮気をするのか不安で、どうしてもスマホを見てしまいます。どうしたらやめられると思いますか?」

「生理前など不安定なときについついスマホを見て、不安要素を発掘しては自己嫌悪に陥る、というループでしんどいです。」

これらを読んで思ったのは、つらいのは見る行為そのものではなく、見たあとの自己嫌悪のほうだということです。

しかもこの悩みには、もう一段やっかいな性質があります。人のスマホを勝手に見ているという後ろめたさがあるので、友人にも言いにくい。浮気されたこと自体が言いづらいうえに、自分の行動もまた言いづらい。秘密が二重になっています。

3番目は、生活が壊れていること

眠れない、食べられない、体重が落ちた。そういう記述が2割弱ありました。

「消灯して横になっても頭がもうずっとフル回転で『人生終わったわ…』みたいなネガティブなことを考えている。スマホを見て『まだ1時だ…』と思い、1時間くらいはうとうとできたかと思ってスマホを見て『まだ1時20分だ…』という感じ。分かるだろうかこの絶望感。」

このカテゴリには、心療内科の受診、パニック発作、4kgの減量といった記述も含まれていました。ここまで来ると、話を聞くサービスの守備範囲ではなく、医療の領域です。

「誰にも言えない」は、件数だけ見ると少ない

22件、7.3%。数の上ではいちばん小さいカテゴリでした。

ただ、書かれ方の重さが他と違いました。ある投稿は、言えない理由を1つの質問の中で4つ挙げていました。

「親友Aは口が軽くベラベラ色んな人に喋ってしまう致命的な欠陥があり前回痛い目にあったので言えません。Bは年下ながらも離婚経験や色々はっきり答えを出してくれるのですが、B本人が不倫進行形。身内には…言えないです。会社に色々話し合う異性同僚いますが、こちらも口が軽い…絶対言えない人。(略)誰にも相談できず苦しいです。占いとかに走ってしまいそうで…」

そして、このカテゴリが少ないことには理由があると思っています。

「誰にも言えない」という状態そのものが、投稿することを止めるからです。匿名の掲示板にすら書けない人は、この303件には最初から入っていません。数えられるのは、少なくとも書けた人だけです。だから実際にこの状態にある人は、7.3%よりかなり多いはずです。

費用の壁

探偵に頼もうとして、金額で断念した記述が35件ありました。

「予算は40万円ほどです。子供もいますので、探偵にかけられる費用には限りがあります。都内や横浜などの探偵社に問い合わせてみたのですが、私の予算を伝えると門前払いを食らってしまっています。100から200万円位はないと浮気調査は難しいとの事でした。」

「高い。本当に高い(笑)。ホームページを見ては閉じて、料金表を見ては閉じて。『いやいや、簡単には頼めないや…。』そんなことを何度も繰り返していました。」

40万円出せる人が「門前払い」になる、というのは、正直こちらの想定を超えていました。

これは他の4つとは性格が違って、悩みそのものというより、他の悩みを解決させない理由にあたります。カウンセリングは1回6,000円前後、夫婦カウンセリングは1人50分11,000円、法律相談は30分5,500円。無料の掲示板と、1回1万円の窓口。その間に、ほとんど何もありません。

外れた仮説も書いておきます

この303件を数える前、私は「浮気の悩みは深夜に書き込まれるはずだ」と思っていました。眠れない夜に一人でスマホを触る、という像が浮かんでいたからです。

外れました。

浮気関連303件のうち23時〜4時に投稿されたものは22.4%。比較のために用意した対照群181件では18.2%。差はあるように見えますが、統計的に意味のある差とは言えませんでした(z=1.10)。深夜に書き込まれる、というのは私の思い込みでした。

ただし、投稿された時刻と、つらい時刻は別です。本文に書かれている苦しい時間帯は、圧倒的に夜でした。「消灯して横になっても頭がフル回転」と書いた人が、その文章を投稿したのが翌日の昼だったとしても、その人が苦しかったのは夜です。

数字が示すのは「いつ書いたか」であって、「いつ苦しかったか」ではない。数える前は、この2つを混同していました。

303件を読んで残ったこと

読み始める前に想像していたのは、「相談できる相手がいない人たちの集まり」でした。実際に読んで残ったのは、少し違う像です。

相手がいないわけではない。言えば返ってくる。ただ、返ってくる言葉が決まっていて、それが必ずしも助けにならない。だから、聞いてくれる人がいるのに、同じことを何ヶ月も一人で考え続けることになる。

「相談できない」の正体は、相手の不在ではなくて、言ったあとに何かが起きてしまうことなのだと思います。関係が壊れる。噂になる。説教される。結論を出すよう促される。

だから必要なのは、たぶん、いい答えではないんだろうと思っています。


私は「よふけ」という、こういう話を聞くだけのLINEのサービスを作っています。結論を出させないこと、「別れろ」とも「許せ」とも言わないことを方針にしています。最初の50回は無料で、そのまま使わなくなっても料金はかかりません。合わなければ、何もしなくて大丈夫です。

よふけについて

なお、この記事に引用したのはすべてYahoo!知恵袋に公開されている質問・回答です。よふけをご利用の方のお話は、匿名にしたうえでも、一切使いません。

よふけは、パートナーの浮気やその疑いで眠れない夜に、ただ話を聞くだけのLINEのサービスです。 「別れろ」とも「許せ」とも言いません。最初の50回は無料で、そのまま使わなくなっても料金はかかりません。

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