「許した」で検索は終わらない — 浮気の検索語46個を並べて気づいたこと
前に、浮気について検索窓に打ち込まれている言葉を2,514語集めた話を書きました。そのとき集めたデータを、別の角度からもう一度見ています。
今回数えたのは、「許」という字を含む語です。46語ありました。
先に立場を書いておきます。私は「よふけ」という、浮気の悩みを聞くLINEのサービスを作っている側の人間です。中立な調査ではありません。それから、この記事では許すべきかどうかについて、私の意見は一切書きません。書かないことがこのサービスの根っこなので、記事でも同じにします。
46語のうち、半分以上は「決められない」
まず、こういう語が並びます。すべて実際に候補として返ってきたものです。
- 浮気 許すべきか
- 浮気された 許すべき
- 浮気された 許すか
- 浮気 許す 許さない
- 浮気許せるか
- 浮気未遂 許すか
判断そのものを検索窓に打ち込んでいます。
検索エンジンは答えを持っていません。それは打った人も分かっているはずで、それでも打っている。前に知恵袋の質問303件を数えた記事で、いちばん多かったのが「別れるか許すか決められない」という状態だと書きました。同じものが検索窓にも出ています。
手が止まったのは、そのあとの言葉でした
並べていて引っかかったのは、判断を尋ねる語ではありませんでした。こちらです。
- 浮気 許した けど 冷めた
- 浮気 許した けど 辛い
- 浮気 許した 後 態度
- 浮気された 許した後
- 浮気された いつ許せる
許したあとに、検索が続いている。
「許す」は、判断が終わったことを指す言葉のはずです。決めたのだから、そこで終わる。少なくとも周りはそう扱います。でもこれらの語を打った人は、決めたあとにまた検索窓を開いています。
「いつ許せる」に至っては、許すと決めたのに、まだ許せていないという状態です。決断と気持ちが別々に動いていて、決断のほうだけが先に済んでしまっている。
「許してしまう」
46語の中に、これがありました。
- 浮気された 許してしまう
「許す」でも「許した」でもなく、「許してしまう」。
自分の意志でそうしているのではない、という言い方です。そうしたくないのに、そうなってしまう。この一語だけ文法が違っていて、目が留まりました。
近いところに、こういうものもあります。
- 浮気 許せる おかしい
許せてしまう自分は、どこかおかしいのではないか。そう思って検索している人がいます。
浮気をされた側が、自分のほうを疑っている。前の記事で「浮気された 魅力ない」という語を見つけて手が止まったと書きましたが、あれと同じ形です。
「許し方」を探している人がいる
- 浮気された 許し方
- 浮気された 許す方法
- 浮気された 許したい
「許したい」と打つ人は、許せていません。許したいと思っていて、そうできない。だから方法を探している。
ここに、周囲との一番大きなずれがあると思っています。
知恵袋を読んでいたときに、こういう投稿がありました。「私の周囲には話を聞いてくれる人がたくさんいます。皆一様に別れろと言います。けど正直やり直せるなら…と願う心があります」。
周りは「別れろ」と言う。本人は「許し方」を検索している。この二つは、同じ人の周りで同時に起きています。
した側も検索している
これも46語の中にありました。
- 浮気 許 され た罪悪感
許された側が、罪悪感で検索しています。
この記事は浮気をされた側の話として書き始めましたが、データはそういう分け方をしてくれません。同じ検索窓を、両側が使っています。
この数字でできないこと
前の記事にも書いた断りを、もう一度書きます。
候補の数は、検索された回数ではありません。 46語というのは、そういう語が実在してGoogleが候補として出す、というところまでの意味です。何人が打ったのかは分かりません。「許した けど 辛い」と打った人が10人なのか10万人なのかは、この方法では区別できません。
もうひとつ。私は「許す側の語のほうが多かった」とは言っていません。 実際、「浮気 一生 許せない」「浮気許さない」のような語も同じ46語の中にあります。数えたのは「許」という字を含む語であって、許す方向と許さない方向を分けて数えてはいません。分けようとしましたが、「許す許さない」のようにどちらとも取れる語が多く、線を引くと恣意的になるのでやめました。
都合よく読める数字だけを出すと、この題材では取り返しがつかないと思っています。
結局のところ
46語を並べて残ったのは、こういうことでした。
許すか許さないかは、決めれば終わる問題として扱われがちです。周囲もそう扱いますし、相談すれば結論を返してくれます。
でも検索窓には、決めたあとの言葉が並んでいます。「許したけど辛い」「いつ許せる」「許してしまう」。
決めたあとにも、その状態は続いている。 そしてそこには、もう相談する相手がいません。一度決めたことをもう一度持ち出すのは、周りにとっては終わった話だからです。
よふけを作ったのは、そのあたりです。「別れろ」とも「許せ」とも言いません。決まらないままでも、決めたあとにまた揺れても、そのまま置いておける場所があっていいと思っています。
答えは出しません。出ないままでも構いません。