「別れられない」という打ち方 — 浮気の検索語63個を、意味ではなく語尾で見た
前に、浮気について検索窓に打ち込まれている言葉を2,514語集めた話を書きました。そのデータを、また別の角度から見ています。
今回数えたのは、「別れ」を含む語です。63語ありました。
先に立場を書いておきます。私は「よふけ」という、浮気の悩みを聞くLINEのサービスを作っている側の人間です。中立な調査ではありません。それから、別れるべきかどうかについて、この記事で私の意見は書きません。
まず、留まる方向と離れる方向に分けてみた
63語を、含まれている言い回しだけで機械的に仕分けました。手で読んで判断すると、そこから先は測定ではなく私の意見になってしまうので、文字列で引ける条件だけを使っています。
| 語数 | |
|---|---|
| 離れる方向(別れる/別れた/別れ方/別れ話) | 33 |
| 留まる方向(別れたくない/別れない/別れられない/別れてくれない) | 19 |
| どちらにも入らなかったもの | 11 |
両方に該当してしまう語は0語でした。合計も63でぴったり合います。
ただ、この表で言えることは思ったより少ないです。「3割が留まる方向だった」とは書けません。 どちらにも入らなかった11語というのは、「浮気別れ 復縁」「浮気別れ 未練」「浮気別れ 冷却期間」「浮気別れ 友達に戻る」といった語です。別れたあとの話なので離れる方向に入れることもできますが、内容は明らかに離れきっていません。線を引く場所で数字が動くので、割合として出すのはやめました。
離れる方向の33語も一枚岩ではありませんでした。「浮気された 別れるべきか」のようにまだ決めていない語と、「浮気されて別れた」のようにもう終わった語が、同じ33の中に混ざっています。
分け方としては、ここが限界でした。
目が留まったのは、語尾のほうでした
割合をあきらめたあと、19語を並べ直して気づいたのは、ここに二種類の言葉が混ざっていることです。
- 浮気された 別れたくない
- 浮気されたのに別れない
これは、そうしないと決めている言い方です。一方で、
- 浮気された 別れられない
- 浮気されたのに別れられない
- 浮気されても別れられない
- 浮気された 離れられない
こちらは違います。「別れない」ではなく「別れられない」。 意志ではなく、できない、という形をしています。
前に「許」を含む46語を数えた記事で、「浮気された 許してしまう」という一語だけ文法が違っていて目が留まった、と書きました。あのときは1語だけでした。同じことがここにも出ているので、データ全体で引き直してみることにしました。
2,514語を「られない」で引くと、16語出てくる
「別れ」に限らず、2,514語すべてから「られない」で終わる語を抜き出しました。16語です。
- 忘れられない(5語) 浮気されても忘れられない/浮気された元彼 忘れられない/浮気された元カノ 忘れられない/元彼 浮気された 忘れられない/浮気されたのに忘れられない
- 信じられない(3語) 浮気された 信じられない/浮気された 人を信じられない/浮気されたあと 信じられない
- 別れられない(3語)
- 離れられない(1語)
- やめられない(4語) 浮気 やめられない/浮気 やめられない 女/浮気 やめられない 病気/浮気やめられない
やっていることは、可能の形を否定しているだけです。忘れる・信じる・別れる・離れる。どれも普通は自分で決められることとして扱われます。それが全部「られない」になっている。
「忘れられない」の5語のうち3語には「元彼」「元カノ」が付いています。もう終わった相手です。 関係のほうは終わっているのに、状態のほうは終わっていない。
最後の4語だけ、立っている場所が違います
「やめられない」。
これを打っているのは、された側ではありません。する側です。
この記事は「別れられない」の話として書き始めましたが、同じ語尾で検索窓を叩いている人が、反対側にもいます。しかも「浮気 やめられない 病気」という語まであって、自分の状態を病気として説明できないか探しているように見えます。
記事⑤の最後にも似たことを書きました。同じ検索窓を、両側が使っています。今回は、両側が同じ語尾を使っていました。
外から見ると、同じ状態が違う言葉になる
63語の中に、こういう並びもありました。
- 浮気してるのに別れない心理
- 浮気してるのに別れない理由
- 浮気されたのに別れない なぜ
- 浮気してるのに別れない女
- 浮気してるのに別れない男
「心理」「理由」「なぜ」。説明を求める形です。
内側からは「別れられない」で終わっています。理由を探していません。探せるならとっくに探しているという状態です。外側からは「なぜ別れないのか」になります。同じ状態を指しているはずなのに、言葉の形が違う。
ただし、これらを打っているのが本当に第三者かどうかは分かりません。自分のことを外から説明しようとして「心理」と打つ人もいるはずです。そこは推測なので、推測として書いておきます。
探したのに、1語も無かったもの
もうひとつ、書いておかないといけないことがあります。
この記事を書く前、私は「別れろ」という語を探しました。周りが言う言葉として、真っ先に出てくるものだからです。
2,514語の中に、「別れろ」は0語でした。
「別れるべきか」「別れた方がいい」のように、判断を尋ねる語は5つあります。でもそれは、言われる側が確かめている形です。言う側の言葉そのものは、検索候補には出てきません。
この連載の1本目で、知恵袋の質問303件を読んで「周囲から返ってくる答えがほぼ一種類しかない」と書きました。別れなよ。そんな人やめときな。回答欄はその言葉で埋まっています。
回答欄には溢れていて、検索候補には1語も無い。
考えてみれば当たり前で、助言する側は検索する必要がないからです。困っていないので。回答欄に残るのは言う側の言葉で、検索窓に残るのは困っている側の言葉です。同じ話題なのに、置かれている場所で言葉が入れ替わります。
そう思って63語を見直すと、ここに並んでいるのは全部、言われた側が一人で打ち込んだ言葉だということになります。
この数字でできないこと
前の記事にも書いた断りを、もう一度書きます。
候補の数は、検索された回数ではありません。 63語というのは、そういう語が実在してGoogleが候補として出す、というところまでの意味です。「別れられない」と打った人が10人なのか10万人なのかは、この方法では分かりません。
それから、これは2026年8月6日に集めた1回分のデータです。候補は入力する人や時期によって変わるので、今日同じ言葉を打っても同じ候補が出るとは限りません。
結局のところ
63語を語尾で見て残ったのは、こういうことでした。
別れるかどうかは、決めれば済む問題として扱われます。周りもそう扱います。「別れろ」と言う人は、それが決められることだと思っているから言えます。
でも検索窓には「別れられない」と打たれています。決めていないのではなく、決められない、という形で。
よふけを作ったのは、そのあたりです。「別れろ」とも「別れるな」とも言いません。決められないまま、そのまま話しておける場所があっていいと思っています。
答えは出しません。出ないままでも構いません。